第一 基本方針

〈 経済情勢 〉
昨年は、政府の経済財政政策などにより、大企業を中心に良好な経済状況がみられ、総じてみれば緩やかな景気の回復基調が続いた。しかしながら、米国の金利の引き上げや、原油価格の下落、中国をはじめとする新興国や資源国経済の減速など世界的な動向を受け、年明けとともに株価の乱高下が繰り返され、日銀による初めてのマイナス金利の導入など、我が国経済の先行きは、不透明感を強めている。
今回の景気回復において、地方や中小企業・小規模事業者にまでその効果が十分に及んでいるとは言い難く、当所による景気動向調査をみても、景況感は昨年8月期及び11月期の2期連続でマイナスが続き、依然として厳しい状況の中にある。
こうした中で、昨年来全国各地域において、「地方版総合戦略」の策定が進められ、都道府県・市町村をはじめ関係団体や金融機関などが一体となって、地域の有する様々な資源や人材を利活用して、自ら主体的に地域経済の活性化に取り組んでいる。
国においてもこうした状況を踏まえ、平成27年度補正予算ならびに平成28年度当初予算案に基づき、中小企業・小規模事業者の振興をはじめ、一億総活躍社会の実現、地方創生の本格展開など、経済再生を積極的に推し進めていくこととしている。

〈 商工会議所が果たすべき役割 〉
全国的にみて人口減少と少子高齢化が進むとともに、TPP(環太平洋パートナーシップ)協定の署名など経済のグローバル化が一層進展していく中で、地域経済においても、こうした国内外の動向に一体的に対応していくことが求められている。
地域をあげての地方創生の取組のもとで、その地域ならではの資源、人材などの特徴を活かしそれらの魅力をさらに磨きあげ、世界にも発信できる強みとしていくことが必要となっている。まさに地方創生は、行政をはじめ様々な主体が協働して知恵を出し合う地域間競争ともいえる。
そのためにも、あらゆる分野の会員により構成され、地域経済社会を支える総合経済団体たる商工会議所は、個々の会員事業者の活発な活動を支援するとともに、地域の総合コーディネーターとして、強いリーダーシップを発揮していかなければならない。

〈 事業展開の基本的考え方 〉
本年秋には、いよいよJR千葉駅の新駅舎が開業する。今後3ヵ年にわたり駅ビルも含め県内の中心地としての魅力ある拠点が整備されていく。これに伴う中心市街地への回遊性の向上や周辺地区の再開発促進による新たなまちづくりの進展が期待されている。また、海辺を活かしたまちづくりでの主要施設の整備や千葉常重による千葉開府890年など千葉市が県内外から大きな注目を集める年でもある。更には、2020年の東京オリンピック・パラリンピックにおける幕張メッセでのオリンピック3競技、パラリンピック4競技の開催に向けて、国内外からの多くの来訪者の受入体制づくりをはじめとして、様々な準備を本格的に進めていくことになる。これらを一体的な好機と捉え、その成果を最大限に具現化し、今後の域内経済の持続的な発展に着実に結びつけていかなければならない。
また、本年度は、一昨年3月に策定した「中期事業運営方針(平成26~28年度)」の最終年度であり、同方針に基づく施策展開の集大成を図っていく必要がある。
平成28年度においてはこれらの課題に向けて、役職員をはじめ関係者の英知、総力を結集して取り組み、関係機関、団体等との連携・補完関係を強化しながら、「信頼され、期待される商工会議所」を目指して、以下の諸事業を推進していくものである。

第二 重点事業

1.中小・小規模事業者の持続的発展

(1)経済情勢、需要動向の把握と提供
会員の業況をはじめ、経済情勢・需要動向等を定期的・計画的に把握し、迅速に提供していく。
※強化していく事業及び新たに取り組む事業の例示(以下同じ)

①域内景気動向等に関する調査の実施
②県内の経済動向に関する説明会の開催(千葉財務事務所、企業調査機関等)
③国内外の需要動向に関するセミナーの定期開催(該当分野の企業人、業界団体、シンクタンク等)
④商圏情報分析に資するGIS(地理情報システム)の活用

(2)中小・小規模事業者に寄り添っての支援
事業展開上の様々な課題について、専門家等の一体的な協力を得て、その改善に向けて経営者とともに継続して取り組んでいく。

①巡回・窓口相談体制の強化
②事業の質向上・拡大に対応した中小企業診断士や企業OBなどの専門家の活用
③行政・金融機関・大学等との連携による支援体制の強化
④マル経や各種制度融資の活用推進
⑤円滑な事業承継の支援
⑥意欲的な経営者向けセミナー(シリーズ)の開催
⑦優良事例企業現場視察会の開催
⑧消費税率の引き上げに伴う軽減税率導入への対応
他に、各種講演会・セミナーの開催、中小企業再生支援の実施等

(3)ビジネスチャンスの創出と販路拡大
売上げの維持・拡大に向けて、会員自らの取組みを踏まえ、会議所や会員間のネットワークを活用して、新たなビジネスや販路拡大の機会を創出していく。

①関係団体、金融機関等との広域連携による商談会・ビジネス交流会の開催
②会議所間のネットワークである「ザ・ビジネスモール」の活用推進
③都内等における会員事業者のPR、展示販売会の実施
④取引相手募集企業による説明会の開催
⑤農業や水産業分野の団体・事業者との交流会の開催
⑥ジェトロ千葉貿易情報センターとの連携による海外展開支援
⑦アジアでの展開を目指した検討チームの設置(会員による検討)
他に、各種講演会・セミナーの開催、関係機関が開催する各種商談会への参加等

(4)新たな事業展開の推進
事業者数の増加や経済活動範囲の拡大に向けて、創業する者や新たな分野へ進出する事業者に対し、専門家、金融機関等やまた会員の協力をも得て多様な支援を展開していく。

①関係団体、金融機関等との協働による開業の実現を支援する創業塾、企業視察会の開催
②起業家支援交流会の開催(地域クラウド交流会など)
③新たな分野での事業展開に資する先進事例企業視察会の開催(首都圏)
④新たな事業分野での展開に向けたワークショップの開催

(5)連携による支援体制の強化
上記(1)~(4)の一連の取組みを具体的・効果的に行うため、当所が中心的役割を担って、行政をはじめ専門家や研究機関等との緊密な連携による支援体制を強化する。

2.域内の経済活動の活発化

(1)多様な人々が魅力を創出するまちづくり
街の賑わいを高めることは、中小・小規模事業者の活動の場を拡充することでもある。域内には千葉都心、幕張新都心、蘇我副都心などの多くの人々が集う場 を有しており、こうした強みを更に活かすため、個々の事業者をはじめ、グループや団体、大学等様々な活動主体と連携しながら、多様な魅力の創出を図ってい く。

①千葉駅新駅舎の開業に合わせた集客キャンペーン・イベントの実施
②中心市街地における回遊性向上のための関係商店街等との横断的・計画的な取組
③千葉市商店街連合会や中心市街地まちづくり協議会などと連携して、各商店街の活性化・賑わい創出の支援
④グループや団体、大学等との連携による集客活動の展開
他に、中心市街地まちづくり協議会の運営等

(2)まちづくりを活かした観光振興
まちづくりに合わせ、観光振興の視点に立って様々な人々が立ち寄り、また滞在し楽しめる魅力づくりに取組み、域内外からの来訪者の増大を図っていく。また、それらの受入れ体制づくりを担う人材の育成・拡充を図る。

①市街地を取り込んだ観光モデルコースづくり
②県外からの産業観光モニターツアーの実施(1泊2日、内陸部の県対象)
③県内を対象とした産業観光ツアーの実施(日帰り)
④近隣商工団体との連携による広域的な観光誘客
⑤地域をあげてのおもてなしによる受入体制づくり
他に、千葉市民花火大会や千葉城さくら祭りの活用等

(3)訪日観光客の取込み
2020年の東京オリンピック・パラリンピック開催を見据え、行政をはじめ関係団体等と連携して、海外からの来訪者にとっても滞在しやすい環境づくりを進め、その消費力を積極的に域内経済に取り込んでいく。

①多言語による情報発信の促進
②Wi-Fi環境の整備
③ホテルと商店街との連携・協働による受入体制づくり
④外国人旅行者に対応する研修の実施
⑤消費活動の促進(免税店、キャッシュレス決済の普及)
3.人材の確保と育成

(1)人材不足への対応支援
中小企業・小規模事業者は、量的にも質的にも人材不足に直面している状況にあり、とりわけ専門人材が多岐にわたる分野で不足している。会員や教育機関等の協力を得て情報提供や企業説明会の開催を通じ、企業と人材のマッチングを行う。

①大学・高校生のインターンシップ事業の推進
②新卒者向け企業説明会・現場見学会の開催
③採用に向けた経営者向けセミナーの開催
④大学・高校等(就職指導担当)と会員との情報交流会の開催
他に、千葉県地域ジョブ・カードセンター事業など

(2)人材の育成支援
会員の事業活動を支える従業員等の資質の向上を支援するとともに、その取組にあたっては、会員の有する人材を積極的に活用していく。また、当所の役職員についても、先進的な事例を参照しながら会議所運営の更なるスキルアップに取り組んでいく。

①新入社員教育研修の実施
②ビジネススクールの開講
③人材育成に向けた経営者セミナーの開催
④各種検定試験の普及拡大(簿記、リテールマーケティング、珠算、ビジネス実務法務、
福祉住環境コーディネーター、国際会計、環境社会、メンタルヘルスマネジメント、ビジネスマネジャー等)
⑤役職員による他団体運営の視察

4.広報機能の積極的活用

(1)的確な情報の収集と提供
会員が求める情報を的確に把握・収集し、当所の広報媒体やセミナー、イベントの開催等を通して、スピード感を持って提供していく。また、それらに合わせて会員間の情報の共有化を図っていく。

①各広報媒体の充実及び媒体間の連関による効果的な発信
②ホームページの多言語化
③メディアを活用した新商品・新サービスの情報発信
④会員からの情報収集策の検討
⑤事業・イベント等の事後広報の充実(取組結果の紹介)
⑥会員間の情報共有化の推進(メディア掲載記事の紹介等)

(2)知名度の向上とイメージアップ
会員のみならず多くの人々に、商工会議所の活動を広く知ってもらうとともに、地域の活力を高める様々な取組みを積極的に展開し、それらを適切に情報発信することで、知名度の向上とイメージアップを図る。

①イメージアップ戦略の策定と実践
②地域イベントへの参加による商工会議所のPR
③会議所活動を紹介するパンフレットの作成

(3)情報交流の促進
会員が保有する有益な情報の共有化を促進するとともに、地域の活性化に取組むグループや団体等との連携による情報のネットワーク化を進め、会員の事業活動の活発化に繋げて行く。

①会員による最新トピックスの提供と発信
②中小企業関係団体等との連携・協働による広報活動の展開

5.意見・要望・政策提言活動の着実な展開

地域経済社会の代弁者として、部会、委員会活動等を通じて、会員の意見等を集約し、国、県、市等に対して提言・要望活動を展開する。また、これらの活動にあたっては、当所自らの具体的な事業活動を踏まえた、より実践的なものとなるよう努める。

①国・県・市等に対する適時、適切な提言・要望活動の展開
②要望活動への体系的な取組
③役職員の政策企画能力向上に向けた研修の実施

6.堅牢な組織基盤の確立と財政基盤の強化

(1)全所をあげての会員増強
役議員・職員の日々の業務活動での様々な機会を捉え、新たな会員の獲得に務めるとともに、また、会員の協力も得て、域内全域において計画的な増強活動を展開する。

①全職員による訪問入会勧奨の強化
②役議員を含むプロジェクトチームによる増強運動の推進
③会員間のネットワークの効果的な活用

(2)収益力の強化

当所の担う支援機能や会員のネットワークを最大限に活用して、独自の安定的な財源の確保に努め、収益力の強化を図っていく。

①共済制度の重点的活用
②新たな収益源の体系的な検討と事業化
③国・県・市・日本商工会議所・関係団体等の補助制度の積極的な活用

(3)業務効率化の徹底
職員の事務処理能力、資質の更なる向上を図るとともに、あらゆる事業についてPDCA(Plan-Do-Check-Action)の視点に立って検証に努め、業務の効率化を図る。

①業務改善に向けた専門機関による検証
②全事業の計画的な評価・見直し
③関係団体・会員企業等の協力による優良事例研修の実施

(4)コンプライアンスの徹底
商工会議所(役職員)として、自らに課せられた使命と役割を認識し、「信頼され、期待される商工会議所」となるため、常に高い倫理観と責任感を持って誠実に業務遂行するとともに、組織体制の整備や意識改革に取り組む。

第三 他の主要事業

1.女性の活躍推進
今後活躍が大きく期待される女性の事業者を積極的に支援するとともに、そのネットワーク化を促進する。また、関係機関と連携して、域内の支援体制の強化を図る。

①女性会員交流会の開催
②女性経営者向けセミナー(フォーラム)の開催
③優良な女性経営の現場視察会の開催
④域内の支援機関のネットワーク化(連携・補完関係の強化)
⑤女性向け起業セミナー、企業視察会の開催
2.会員交流の促進
当所の有する人的ネットワークを活用して会員相互の交流を促進し、会員事業者の結束力を高めていく。

①会員の定期的な交流会の充実
②市内各地での交流会の試行(ブロック別)
③会員企業従業員を対象とした交流イベントの開催
④地元プロスポーツ応援のための集合観戦の実施
⑤幕張新都心地区の会員交流の推進
⑥他会議所との相互交流のための視察会の開催
他に、支店長交流会、新会員の集い、士業交流会の開催等
3.会員サービスの向上
会員のニーズを的確に捉え、役立つ各種サービスを幅広く提供し、特に団体としてのスケールメリットを活かした福利厚生面でのサービスの充実を図る。

①健康企業への取組の促進
②介護対策への対応(セミナー・講習会)
他に、優良従業員表彰、従業員向け健康診断の実施、各種共済・保険制度の普及等
4.良好な環境づくりの推進

職場環境はもとより、地域環境問題などに積極的に取り組み、豊かな地域社会づくりへの貢献に努める。
5.東京オリンピック・パラリンピックへの取組み
2020年の東京オリンピック・パラリンピック開催の効果を域内経済に取り込む方策を検討していくとともに、関連情報の収集、提供に努める。また、関係機関や団体等と連携して、開催に伴う海外からの来訪者の受入れ体制づくりを進める。

①ビジネス機会の検討と取組(会員によるワークショップ)
②関係団体等との連携によるおもてなし受入体制づくり(県・市方針による)
③リオ大会での各種取組の情報収集

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